Renault Passions

Paris JOURNAL

R's Originality,

Words=Maiko Matsunaga
Photos=Manabu Matsunaga
PARIS JOURNAL 老舗にして革新的。とらやパリ店に見るパリの中の日本。

 和菓子の老舗、とらやは1980年に日本文化の一端としての和菓子を紹介する目的で「とらやパリ店」をオープンした。“五感の総合芸術”といわれている和菓子。パリの人々にこの見慣れない、食べ慣れない和菓子を店内に飲食スペースを併設したサロン・ド・テというスタイルで提供したことが今に至る大きな成功のルーツとなった。
 コンコルド広場、マドレーヌ寺院、チュイルリー公園、シャンゼリゼと、パリを代表する名所に囲まれたとらやの立地条件もその名を広めるには好条件だった。ひらひらと風に舞うフランス初の“暖簾”を掲げたその店構えは、オスマン建築の街並みの美観を壊すことなく、しかも気品あふれる佇まいでパリの人々を刺激し続けた。当時の虎屋16代目店主、黒川光朝氏は店舗建築にこだわり、自ら撮影した写真を店内に飾るなど、アートへの深い関心をパリジャンたちに示してきた。

02

02.田根剛氏による内観。シンプルで洗練された空間が広がる。

 そして、パリ店のオープンから35周年を迎えた2015年6月に、リニューアルオープンを果たした。建築設計に今をときめく若手建築家、DGTの田根剛氏を迎えたという決断は、とらやの新しい挑戦と受け止めるべきだろう。ちなみに田根氏は、ルノーのパリモーターショーにおけるブース設計を手掛けている。
 創業からおよそ500年ほどの時間が流れているが、とらやは伝統を頑なに守るのではなく、それに敬意を表しながら、今なすべきことをしていくという志を掲げている。今回の改装は、和菓子づくりにも通じる「クラフトマンシップ」というコンセプトを掲げ、和菓子がその土地の素材を使って作られるように、土地の素材を使って空間を作ることにこだわった。

03 04

03.羊羹からインスピレーションを得たYOKAN TABLE。

04.店内の至る部分に角がない徹底された空間設計。

 例えば、屋号の虎の字を4つの鐶で囲んだ「鐶虎」の丸みを思わせる、店内の全てから“角”を無くす意匠には、和菓子作りにも通ずる職人技が細部にまで行き届いている。フレンチオーク材の「YOKAN TABLE」と名付けられた大テーブルも全て角を削ぎ落としてあり、椅子やレジ後方の和菓子をストックする引き出しの取っ手、ショーケース、天井の四角、2階の化粧室へ向かう階段まで、その全てに角がない。そんな一切妥協しない姿勢から「和と洋の調和」を感じる空間が誕生した。  “zen(禅)”というスタイルや言葉が浸透したパリでは、お茶を嗜む発信地としてもとらやの存在は大きくなりつつある。そこで、パリジャンの和菓子に対する強い関心を感じ、パリ店内には小さな作業台を作りつけた。どんな道具を使って、どうやって和菓子は作られているのか。そんなパリジャンたちの疑問に応えるサービス精神が現れた空間だ。

05.和のインテリア意匠が光るフレンチオーク材の棚。

06.とらやのサインはパリの人々がお茶と和菓子を連想するアイコンだ。

 重厚感と高級感を兼ね備えた以前の店舗とは大きく変わり、今回のリニューアルは、道路側を大きな窓枠のガラス張りに仕立てたことによって、柔らかな自然光が入る明るい空間に出来上がった。「明日のとらや」が見事に表されている。



掲載情報は2016年1月時点のものです。

PAGE TOP