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JOHN MOORE ON ORGANIC LIFESTYLE

Trendy & Cultural #005,

Text:Sachiko Kawase Photos:Courtesy of John Moore Organics

不便でも美しい。キレイじゃなくてもおいしい。
それが、“オーガニック”ライフの豊かさ。

A4サイズのスペースがあれば、1年中サラダを食べられるくらいの野菜を収穫できる!? そんな「野菜作り」の概念をひっくり返すような提案を実践しているのが、社会起業家でありオーガニックガーデナーの肩書きをもつ、ジョン・ムーアさん。大手広告代理店・電通の敏腕コピーライター、そしてアウトドアブランド、『パタゴニア』の日本支社長という華やかな経歴を持つ彼は今、高知の山奥に居を移し、“オーガニック”なライフスタイルを自ら実践しながら、ワークショップや講演などの周知運動も行っています。そんなジョンさんが考える、オーガニックとは?

?ジョンさんが講師をつとめる、「ホームエコファーマー養成講座」は、どのような取り組みですか?

「2012年4月から、日本野菜ソムリエ協会と一緒に取り組んでいるワークショップです。参加者は、自分が食べる野菜を、自分の手で育ててみたいと思っている方や、オーガニックなライフスタイルに関心のある方々です。東京を中心に開催しているこのワークショップでは、都会の暮らしの中でできる、オーガニックな野菜作りのノウハウを学ぶことができます。みなさん最初は聞いて驚くのですが、実はA4サイズのスペースがあれば、一年中サラダが食べられるくらいの野菜を育てることができるんです。小さなベランダでも、家の中でも、プランターの代わりにペットボトルを使ってでも、おいしい野菜は作れるんですよ」

?ジョンさんの野菜作りのコツ、こだわりはなんですか?

「質の良いタネを選んだり、キッチンの野菜くずを使って健康な土壌を作ったりすることはもちろんですが、そのほかに私が祖国・アイルランドの祖母から教わった方法があります。たとえば、相性の良い植物同士を一緒に植えて、よりおいしい野菜やハーブを育てる『コンパニオンプランティング』と呼ばれるものがひとつ。また害虫を遠ざける作用のあるマリーゴールドや、逆に蜂や蝶を引きつける効果のあるルリジサといった植物を活用して、人工的な薬品などを使わず、オーガニックに育てる方法もあります。こういった菜園づくりを通して、さらには、まわりの人たちとの関係を育む方法についても学び、暮らし方や生き方全般についても考えていきます」

?オーガニックとは食べ物のことだけではないのですね。

「食は、オーガニックなライフスタイルの入口ではありますが、すべてではありません。衣服やスタイルでもありません。生き方や暮らし、考え方や感じ方そのものなのです」

?ジョンさんご自身の高知での暮らしはどうされているのですか?

「自然豊かな里山にある我が家では、トイレとお風呂場は屋外にあります。しかもお湯を沸かすときは薪ストーブです。夏には暑いし、雨や雪のときも大変! でも、学校から戻った娘が川や菜園で遊び、その傍らでお風呂の薪を準備しているときは、とてもすばらしい気分です!」

?都会で忘れられてしまったそんな暮らしこそが、オーガニックの原点なのでしょうか?

「オーガニックとは自然そのものであり、自然とは不便で無秩序なものです。整備されていないし、キレイでもない。それがオーガニックな暮らしです。私たちは、行動も考え方も感覚も生活も、あまりにもキレイ好きになり過ぎました。土に手を突っ込んで、もっと汚れましょう! 外に出てドロだらけになってみれば、オーガニックとはなにか、自身の経験としてはっきり分かると思いますよ」

?ところで、世界的な大企業や広告の分野で華やかなキャリアを築いてきたジョンさんが、オーガニックな暮らしを提唱する社会起業家に転身したのはなぜですか?

「良く聞かれる質問ですが、私はビジネスのキャリアを築こうと思ったことは一度もありません。これまでやってきたことはいつもエデュケーション(教育)でした。本来の広告というのは“学び”や“気づき”を促すためのものです。たとえば、私がいたパタゴニアという会社は、“ラーニング・オーガニゼーション(学習する組織)”でした。私たちは、『私たちの仲間』つまり顧客に、“オーガニックで持続可能な暮らし”についてどう伝えるかを常に考え、学んでいました。今はそういうことを共に考える相手が、農家や学校、個人に変わっただけの話で本質はまったく変わりません」

?すると、今のジョンさんの暮らしや活動は、これまでのキャリアの延長に過ぎないのですね?

「そうです。そもそも私のように高知の里山で、自然とともに暮らすこと自体、みなさんが思っているかもしれないような“特別なこと”ではないのです。たとえば電気は、太陽から作ることだってできるでしょう? つまりそれが都会であれ、田舎であれ、日常生活と自然というのは切り離して考えるべきことではないのです」

?講演やワークショップのほかに、今、ジョンさんが情熱を傾けて取り組んでいるプロジェクトはなんですか?

「みんなでタネをまくプロジェクトです。このプロジェクトでは、まずその土地に昔から自生していた花や食物にどんな種類があるのかリサーチします。エリアによって自生できる種類に違いがあるからです。その中から自分の好きな花や野菜のタネをいつも忍ばせておいて、土地の所有者の賛同を得た上で、育成に最適な場所を見つけたらタネを取り出してまくんです。?たとえば私のベースである高知では、昔から自生している大豆、小麦、大根やさまざまな薬草のタネをまいています。私もいつもやっているし、ワークショップに参加してくれた人の中にも始めた人がたくさんいます。こうすることで古来種の80%が失われているといわれている現状から、植物のヴァラエティを本来の姿に戻し、自然界に残していくことができるのです」

?そのプロジェクトに対するジョンさんの思いとは?

「まいたタネは芽を出し、花を咲かせ、花がまた実を結び次のタネとなり、また新しい芽を出し……と、次の世代を生み出していきます。人間が作る作物は、1代限りで収穫・消費され、2代目以降を生みださないものがほとんどです。たとえば、現在流通する大豆の80%は、その種類の典型です。そういった作物は気候や土壌の変化や、病気に対する耐性が弱いのです。そんな作物ばかりになったら、子どもたちは将来何を食べればいいのでしょう? 次世代のための“タネをまく”という小さな行動が、ひとりひとりの意識を変え、社会を変え、未来を変えるのだと思っています」

  • ジョン・ムーア John Moore
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ジョン・ムーア John Moore

PROFILE

ジョン・ムーア John Moore

社会企業家、オーガニックフード・ガーデニング教師。英国シェフィールド大学教育学部卒業後、
教師を経て、大手広告代理店の電通に入社。
コピーライターとして活躍する。その後、パタゴニア日本支社長に就任。
現在は、johnmoore associates代表。また2012年3月には、高知県仁淀川町と共同で、
地域古来の植物品種と文化の保持を目的としたSeedBank(タネ銀行)を設立したほか、
日本野菜ソムリエ協会と共同で「ホームエコファーマー養成講座」を開設している。

掲載情報は2012年6月時点のものです。

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※写真には一部欧州仕様を含みます。

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